コラム:化石紀行

2007年02月21日

コラム:化石紀行

石の館 館主が平成8年に南米に行った際に、とうとう化石発掘現場にまで行ってしまいました。このコラムではその時の模様をお伝えします。

ジュラ紀、今から約一億三千万年前の昔、南米大陸とアフリカ大陸がまだ陸続きの頃です。人類がこの地球上に誕生したのが二百万年前ですから、気の遠くなるような昔です。

そんな昔の化石がごろごろ出るとある人から聞き、どうしてもその現場に行き、化石の発掘をしたいと思い、3年の間調査をしてやっとその場所をつきとめました。

サンパウロ市よりジェット機で約5時間、ブラジルのセアラ州のAと言う町に着いた。飛行場には前もって仲間が連絡をしておいてくれたので、現地人が出迎えに来ていた。

この山の遥かかなたに夢にまで見た化石がと思うと・・・
化石紀行1







セアラ州はブラジルの中でも殆ど雨が降らず、貧しい州です。建物も大変に粗末で屋根のない家が時々見られます。このA町からその日の内に出発しました。高さ千mくらいの高原を走ること約7時間。
山の頂上は台地で平らな砂浜のような地形が続きます。その昔、海底だったことが素人の私にも解った。
化石紀行2







台地の道もだんだんと狭くなり、所々に大きな穴や大木が倒れている。木材切り出しのトラックと時々すれ違う。その度に運転手が車を止めて長話をする。時間の流れがあまりにもゆるすぎる。
私は少しでも早く現場を見たい。日の明るい内に化石を見たい。
そんな気持ちで苛立ちを感じる。

運転手がそろそろ車では行けないことを告げる。道はまだあるのにと聞くと、何やら先が悪路らしい。
それに現場は近くにあるらしい。
化石紀行3







既に周囲は暗くなってきている。今日は無理だなと思った。化石を掘る人の家に泊めてもらうことになっている。
電気は当然ない。ランプとろうそくの火が頼りだ。相変わらす子供が多い。
電気がないのだから、当然、テレビ、冷蔵庫、その他の電気を使用するものは何もない。

夕食は何だか得たいの知れない料理だ。
でも現地人はとても明るい。日本人は初めて来たと言って歓迎(?)してくれた。
何故かキリストの肖像画が印象的だった。
明日は早く現場に行くので早く寝た。不気味なくらい静かだ。
化石紀行4







いよいよ化石発掘現場に行く。私はカメラとフィルムの点検をし、現地人と一緒に歩き出した。
道はだんだんと細くなり、最後になくなる。そこから林の中を歩く。約2時間くらい歩いた。

驚いた事に路傍の石はみな化石が入っている。堀の代わりに化石の破片を積む。
信じられない光景だ。
林の奥の方から人の声が聞こえる。いよいよ来たなと思った。
思えばサンパウロから2,200kmも離れた山の中。よくぞ来たなと思った。
化石紀行5







人の声に向かって歩くこと30分、あたり一面に化石の破片の山が現れる。見渡せばあちらこちらに化石の破片のボタ山が見える。
どの石にも化石が入っている。それが無残にも割られている。
信じられない光景だ。
近くで石を割る音が聞こえる。私は早足でその方向へ急いだ。
化石紀行6






いたる所に採掘の大きな穴がある。その中から石を掘る音が聞こえる。

すべて穴には所有者が決まっており、決して他人の場所は掘らない。
うっかりよそ見をしていると穴に落ちる。
穴は2〜3m位はある。粘土層の土で湿っている。
本当にこんな掘り方をして良いのかと思う。あまりにも雑然としている。
化石紀行7







私も穴の中に入った。少し冷んやりとしている。壁のいたる所に化石を含んだ石が露出している。
一億三千年前の長い間眠り続けた化石の叫び声が聞こえる。

自然が、地球が気の遠くなるような時間をかけて作り出した芸術品。
一つとして同じものはない。
皆、表情が違う。
化石紀行8







穴の中で現地人がつるはしで石を掘り出している。
彼らは1日100円位で働いている。化石の持つ学術的、芸術的な意味など全然知らない。ただ石をうまく割ると中から魚や他の動物が出てくる。
うまく割れば金になる。化石がどんな値段で売られているのかなどに興味はない。
彼らにはお金より物の方が喜ばれる。
日本のたばこ1本をあげたらニコッと笑って掘り出す。
化石紀行9







私は1つ1つの化石の破片を見た。
魚の化石、亀、トンボ、メダカ、その他様々な化石の破片が散乱している。
こんな掘り方をしているなら、そっと大地にこのまま眠らせてあげたい気がした。

なぜなら化石たちは、私達と同じ、いや遥かに先輩に当たる生物の死骸だから。
化石紀行10






仕事も大体終わった。掘られた化石は子供達がロバの入れる所まで運ぶ。ロバは車の入れる所まで運ぶ。車はA町まで運ぶ。そしてA町から二千数百km離れたサンパウロへと運ばれる。
不思議とA町には化石の破片すら売っていない。
手伝ってくれた子供達と最後の別れに写真を撮った。
彼らもまた、大きくなってもこの台地から離れようとはしない。
化石紀行11







更に化石の旅は続く。サンパウロ州の意外と近くに絶滅末期の恐竜メソサウルスの化石が出ると聞き、現場へと向かった。
見事な層状をしている。
化石紀行12







ダイナマイトで岩を砕き、化石を探す。これも当然のことだが、化石の破片が出る。
採掘も魚よりはるかに難しく、数も極めて少ない。
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私もブラジル人と一緒に探した。尻尾などの破片はあるが、全景の発掘はできない。
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化石紀行16

ishinoyakata at 20:54|PermalinkComments(0)clip!